
前回:企業人事のAI活用術:採用業務はどこまで自動化できるのか ①
前回の①では、企業人事の業務を細分化したうえで、最も自動化効果が出やすい「応募者対応・書類選考」を、すでに契約しているChatGPTまたはClaudeだけで進める手順を紹介しました。ただし、書類選考を効率化しても、そもそも応募が集まらなければ選考する母集団がありません。
今回の②では、①で「自動化ポテンシャルが高い」としたもう一つの業務、母集団形成——スカウト送付とSNS採用広報——を、同じく追加ツールなしで仕組み化する手順を解説します。
Table of Contents
この記事でわかること
- 母集団形成の6工程のうち、AIで時間を減らせるのはどこか
- スカウト文面を型に分けて量産する6ステップ
- SNS採用広報を4つの投稿型で回す方法
1. 母集団形成のどこに時間がかかっているのか
「スカウトを送る」という一つの作業に見えても、実際には次の6工程に分かれています。
- ターゲット定義(どんな人に送るかを決める)
- 候補者の抽出(媒体の検索条件で絞り込む)
- 文面作成(求人ごと・相手ごとに書き分ける)
- 送信・記録(媒体から送り、送信先を残す)
- 返信対応(返信内容に応じて返す)
- 再アプローチ(無反応・辞退者へ改めて送る)

このうち②の抽出は媒体の検索機能、④の送信は媒体の管理画面が担う部分で、AIが入り込む余地はほとんどありません。一方、③の文面作成、⑤の返信対応、⑥の再アプローチは「書く作業」であり、ここが担当者の時間を最も消費しています。
特に③は、求人が5件あれば5通り、送り先の経歴に合わせるならさらに枝分かれします。結果として「テンプレートを1つ作って全員に送る」運用に落ち着き、返信率が下がるという流れになりがちです。
2. 実践編:スカウト文面をAIで量産する
書類選考のとき(①のステップ2)と同様に、ChatGPTまたはClaudeの「Projects」機能でプロジェクトを1つ作り、そこに材料を置いてから書かせます。毎回ゼロからプロンプトを書かない、という考え方は同じです。
ステップ1:文面を6つのブロックに分解する
「良いスカウト文を書いて」と頼むと、当たり障りのない文章が返ってきます。先に型を決め、ブロックごとに中身を埋めさせてください。

特に差が出るのは③「なぜあなたに送ったのか」です。ここが薄いと、どれだけ丁寧な文章でも定型文だと判断されます。
ステップ2:ターゲット像を1枚にまとめる
求人票をそのまま貼り付けるのではなく、「誰に送るか」を1枚のシートにします。これをProject instructionsに入れておくと、求人が変わっても書き分けの精度が安定します。

「相手が抱えていそうな不満」と「触れない情報」の2行を必ず入れてください。前者がないと文面が求人票の要約になり、後者がないとAIが企業名や推測を勝手に書き込みます。
ステップ3:プロジェクトに保存する
- ChatGPTの場合:Projectsでプロジェクトを作成し、Project instructionsにステップ1の型とステップ2のシートを記載
- Claudeの場合:Projectsで同様にプロジェクトを作成し、カスタム指示(Project knowledge/instructions)に同じ内容を記載
求人ごとにプロジェクトを分けるか、1つのプロジェクトに複数求人のシートを入れて呼び分けるかは、募集件数で決めてください。常時5件以上動いているなら、職種カテゴリごとに分けるほうが混ざりません。
ステップ4:1本ではなく3パターン出させる
プロジェクト内で次のように依頼します。
登録したターゲット像シートと文面の型に沿って、スカウト文面を3パターン作成してください。Aは仕事の中身から、Bは経歴の重なりから、Cは条件から書き始めてください。各パターンについて件名と本文を出し、本文は250字以内にしてください。

どの切り口が効くかは職種と媒体で変わります。1本に絞らず、送り分けてから判断してください。
ステップ5:差し込み項目を決めて台帳で管理する
文面のうち相手ごとに変える箇所(③の「経歴の重なり」など)を差し込み項目として切り出し、送信結果と同じ表で管理します。
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「使った型」の列を残しておくと、どの切り口の返信率が高かったかを後から比べられます。
ステップ6:返信後の文面もまとめて作っておく
返信が来てから文面を考えると、対応が遅れます。同じプロジェクト内で、次の3つを先に作らせてください。
- 返信あり:面談日程の候補を提示する文面
- 辞退:今回は見送る旨を受け止め、別ポジションが出た際の連絡可否を確認する文面
- 無反応:2〜3週間後に、別の切り口で再送する文面
3. 実践編:SNS採用広報を仕組み化する
SNS採用広報が続かない理由のほとんどは「毎回ネタを考えている」ことです。投稿の種類を先に決めてしまえば、1回の依頼で1か月分の下書きが揃います。
ステップ1:投稿の型を4つ決める

求人紹介ばかりを並べると宣伝色が強くなり、フォローされにくくなります。②〜④を挟むことで、応募前の疑問を先に消す役割も持たせられます。
ステップ2:1か月分をまとめて出させる
この4つの投稿型に沿って、来月の投稿案を週1本ずつ計4本作成してください。各投稿について、本文(200字以内)、ハッシュタグ5個、画像で何を見せるかの指示文を出してください。

ステップ3:画像は「指示文」まで作らせる
投稿文と同時に、画像で何を見せるかの指示文を出させておくと、デザイン担当や画像生成AIへそのまま渡せます。社員の写真を使う場合は、掲載可否の確認を必ず人が取ってください。
ステップ4:予約投稿し、見る数字を決めておく
投稿後に見る指標を先に決めます。採用広報では「いいね」より、求人ページへの遷移数と、そこからの応募数のほうが判断材料になります。投稿文に載せるリンクは、どの投稿から来たか分かる形にしておくと集計が楽になります。
4. この方法の限界

文面を増やしても解決しない部分があります。特に、返信率は「誰に送るか」で決まる部分が大きく、対象がずれていればどれだけ書き分けても改善しません。文面を作り込む前に、まず媒体の検索条件を見直してください。
また、AIは候補者本人の経歴を知りません。差し込みに使う情報は媒体側から人が拾う必要があり、推測させると事実と違う内容を書いてしまいます。媒体ごとの文字数制限、記載できない条件、連絡先の扱い、送信数の上限についても、媒体の規約と関連する法令の範囲で人が確認してください。
5. すべてを一括で任せるなら:HRAIT IQ+

ここまでの手順は、一度組んでしまえば文面作成の時間を大きく減らせます。一方で、ターゲット像シートの更新、台帳の運用、再アプローチの管理、毎月のSNS投稿の用意は、募集が続く限り止まりません。①で紹介した書類選考の運用と合わせると、維持する仕組みは決して少なくありません。
弊社のHRAIT IQ+は、採用計画の策定からスカウト配信、書類選考、内定者フォローまでを一つのプラットフォーム上で一括対応できるサービスです。「仕組みは作れたが、回し続けるのが大変」と感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。
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